Waking Life
- モリマリ
- 2016年9月25日
- 読了時間: 6分

Waking Life
(ウェイキング・ライフ)
2001年公開
監督
リチャード・リンクレイター
他の主な作品:Before Sunrise(恋人までの距離)、Before Midnight(ビフォア・ミッドナイト)、School of Rock(スクール・オブ・ロック)、Bernie(バーニー/みんなが愛した殺人者)、Boyhood(6才のボクが大人になるまで)
ストーリー
主人公の青年がある街に戻ってくる。彼は様々な人と出会い、彼に語りかけていく。人間の存在意義、生きるとはなにか?死とはなにか?夢とはなにか、人間の未来は?次から次へと投げかけられる問いかけや発言に主人公は耳を傾けていく。幾度となく夢の中で目覚める夢を見る。夢と現実の境もわからないまま、彼の迷宮の旅は続く。
テーマ:夢
映画は、夢に関する描写が多い。冒頭のシーンでも、
"Dream is destiny."
夢は運命だ
という台詞から夢への世界の幕が開かれる。
時計の文字が読めない。電気のスイッチをオフにしても電気が消えない。自分の住所が思い出せない。
主人公の青年は、夢の中で夢であることを何度も気づかされる。
映画の夢に関する描写は、明晰夢の特徴と一致する。
明晰夢とは?
・夢の中にいるという自覚がある
・夢が現実と全く同じリアルさになる
・普通の夢に比べて精神的な焦点が広がる
・流動性のある世界で、夢の中では大体どこにいるかわからない
・現実世界の記憶を思い出せない。ただただ「今」がすべてという感覚になる
・夢をコントロールできるようになれば、空を飛べるようになったりと、なんでも可能になる
(引用:明晰夢.com)
しかし、異なる点が一つだけある。
明晰夢は、あくまでも身体が寝ている間に脳が覚醒している状態に見られる夢のこと。なので、起きようとすれば意図的に目覚めることもできるのだが、映画の主人公の青年は何度も自分の部屋で目覚め、夢の世界から抜けられないことに徐々に焦りを感じ始める。
そして、ついにある青年との会話の中でヒントを得る。
エンディングの意味
この映画を初めて観てから数年が経ち、毎年一度は見てきた。
そして今回メモを片手に鑑賞し、ようやくこの映画のオチが自分なりに理解できたのだ!
主人公の青年が、夢から抜け出せられない理由。
それは、彼が死んでいるからだと考察した。
そのヒントは、同監督の別の作品Before Sunrise(でも共演しているイーサン・ホークとジュリー・テルピーの会話から得られた。

"I've been thinking about what you said...about the feeling like you're observing your life from the perspective of an old woman about to die."
"I still feel like that way sometimes. Like I'm looking back on my life. Like my waking life is her memories."
「君が言ってたことを考えていたんだ...『死を目前にした老女の視点で自分の人生を観察している気がする』って」
「ええ、時々そう感じるわ。私の人生はまるでその老女の回想みたいなの。」
ポイントとしては、映画のタイトルがまるで偶然かのように台詞で使われていることだ。
先にも後にも、タイトルが発せられたのはこのシーンだけであることから、脚本も書いた監督が出したヒントなのではないかと踏んだ。
映画の登場人物たちの「人生」がもしも、誰かの死の間際に見えた回想だったとしたら?という仮説を元にこの映画を鑑賞してみた。
中でも映画中、テレビを観るシーンが二度あるが、その中で断片的に「死」を含意する台詞が度々観られた。
・天国と地獄について語られる
・一度ならず二度目にもテレビを観るシーンで登場し明晰夢について語る女性の台詞
"Down to these centuries, the notion that life is wrapped in a dream has been a pervasive theme of philosophers and poets. So doesn't it make sense that death would be wrapped in a dream? That, after death, your conscious life would continue and what might be called a 'dream body?' It will be the same dream body as you experience in your everyday dream life, except that in the post-mortal state, you could never again wake up.
Never again return to your physical body."
「『人生は夢である』という考え方は、長年哲学者や詩人のテーマでした。
では『死もまた夢である』と言えませんか?
死後も『夢の中の体』によって意識は生き続ける。
生前も死後も『夢の中の体』は同じです。
ただし死んでしまうと二度と目覚めることはなく自分の肉体には戻れないのです」
・そのシーン以降、死に関して語るキャラクターが度々現れる。
・主人公の青年は、ついにピンボールで遊んでいるキャラクターに近づく。

この白いシャツの青年は映画の序盤に登場し、宛のない主人公が向かう先を決めたあのキャラである。

状況を掴めていない主人公の行く先を決めた緑のシャツの青年
そして主人公の青年は、監督にそっくりなキャラクターに「自分が夢から起きられないのは死んでいるからなのではないか」問いかける。
その問いかけに、白いシャツの青年は自分が経験した夢を語りながらこう応えた。
"...there's only one instant, right now. And it's eternity. It's an instant in which God is posing a question, which is basically 'Do you wanna be one with eternity, do you wanna be in heaven?' And we're all saying, 'No, thank you. Not just yet.'
So time is just this constant saying no to God's invitation...There's just one instant, and that's what we're always in...Then she tells me that this is the narrative of everyone's life. Behind the huge differences, there is but one story. And that's the story of moving from 'No' to the 'Yes.' All of life is, 'No, thank you. No thank you.'
Then ultimately it's 'Yes, I give in. Yes I accept. Yes I embrace.' That's the journey. Everyone gets to the 'Yes' in the end, right?"
『時』は今という一瞬が永遠に続くものだという。その一瞬に神が問いかける。
つまり、『あなたは永遠の存在になって天国へ行きたいか』
俺たちは答える。『いや、今はまだいいです』
時の流れは、神の招待を断り続けること...今という一瞬しか存在しない。
彼女(注:夢に出てきたグレゴリー夫人を指している)はこうも言った、
『これが人生なのよ、究極の物語はたった一つしかない。
神の招待を受け入れること。
初めのうちは「ノー」と言い続け、最終的には「はい、受け入れます。喜んで応じます」
これが人生の旅路。誰もが最後には受け入れる」
主人公は苛立ちながら「どうやって夢から覚めたんだ」と白いシャツの青年に問い詰め、そしてこの返答を得た。
"If that's what you're thinking, you probably should. I mean if you can wake up, you should. Because, you know, someday, you won't be abel to. But it's easy. You know, just wake up."
君が目覚めたいなら目覚めるべきだ。できるならね。
だっていつかはできなくなるんだから。
簡単さ、ただ起きればいい。
主人公はまた自分のベッドで目覚める。時計を見ることもなく、電気をつけることもなく、外に出て歩き始めた。彼はようやく夢から目覚めたのか観客たちに知らせることもなく、主人公は歩いていく。
彼がたどり着いた先は、映画の冒頭のシーンで登場する家。あの男の子は、主人公の幼少期だったのだろうか。

車に触れ空を見上げると、主人公の体が浮いていく。つまり、彼はまだ夢の中にいることを示唆している。
幼少期と同様に抵抗するかのようにドアの取っ手に触れるが、今度は取っ手に捕まらず、彼は姿がなくなるまで天高く翔び、そして映画の幕が下りる。

彼はついに死を受け入れ、そして夢が終わり、ストーリーが終わる。
以上が私の映画の考察だ。
監督の思い入れ
・監督もキャラとして登場している。しかも、あのピンボールをしている青年だ。


・彼のドキュメンタリー映画の一つにDream is Destiny(夢は運命)というタイトルのものがある。この台詞は、冒頭で女の子が発した台詞と全く同じもの。

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